はじめに
世の中の設備や機器はほとんどが電気を利用して動かし、熱や光を発しています。停電になって初めて電気のありがたみを経験したこともあるのではないでしょうか。
一般住宅や、ビル、電車、太陽光発電システム、エアコンなどの空調システムは電気工事や電気保守の仕事で毎日たくさんの作業をすることにより社会インフラとして成り立っています。
この電気インフラを仕事にするとしたならば、はじめに必要な資格となるのが電気工事士です。
電気工事士の資格は、受験資格に制限がなにもなくとても受験しやすい資格ですから、ご自分のスキルアップのために手に職をつけることを目的にするなら、まったくの素人からでも合格を手に入れることができる資格です。
では電気インフラを支える工事に従事するための資格の説明をいたします。
1 電気工事士になるには
電気設備の工事をおこなうための資格が電気工事士です。
電気を安全に使用できるように配線をして電気を届け、安全管理をすることをおこなうことができる資格を有する者を電気工事士と称します。
電気工事士の資格は、第二種電気工事士と第一種電気工事士の二つです。
1-1 第二種電気工事士ができること
第二種電気工事士は一般住宅や商店など小規模の店舗や事務所で600v(ボルト)以下の低圧で受電する場所の配線工事や電気設備の作業ができる資格です。
これを「一般電気工作物」と称します。
一般電気工作物とは
一般的に使用電圧が低圧で、電気の使用者側の設備も小規模で回路構造も単純なものであり、その使用方法も簡単な工作物などを言います。
例えば、戸建て住宅や大型冷凍機などを備えていない中小商店が一般電気工作物です。
1-2 第一種電気工事士ができること
第一種電気工事士は、最大電力500kW(キロワット)未満の電気工作物の電気工事をおこなうことができる資格です。
これを「自家用電気工作物」と称します。
自家用電気工作物とは
簡単に説明すると、電力会社などの電気供給会社から、600Vを超える電圧を受電して電気を使用する設備のことを言います。
一般には、工場、ビル、福祉設備、病院、学校などの電気設備が自家用電気工作物です。
1-3 電気工事士の年収
第二種電気工事士 月給 20万~35万円 賞与あり
平均年収では400万~500万円
第一種電気工事士 月給 25万~45万円 賞与あり
平均年収では500万~700万円
※参考、求人ボックス
この年収が低いのか高いのかは今の問題ではなく、電気の仕事に関わることで、将来につながるステップアップができる仕事だと考えることです。
電気の資格には、一級、二級電気工事施工管理技士や電験三種の資格が後に控えています。
第二種電気工事士資格を皮切りにステップアップして、電気設備工管理をするようになると実技労働が少なくなり管理部門での給与体系になります。
電気設備工管理 月給 50万~80万円
以上のように将来有望な職業で今後の年収を考えることができる職種でもあるのです。
2 電気工事士の試験について
受験希望者申込フロー
・第一種電気工事士資格試験申し込みフロー
一般受験
- 試験申し込み方法 インターネット申し込み 10,900円 書面による申し込み 11,300円
(申込期間6月~7月上旬) - 筆記試験を受験 10月上旬(日曜日)筆記試験合格後③へ進む
- 技能試験を受験 12月中旬(日曜日)
・第二種電気工事士資格試験申し込みフロー
一般受験
- 試験申し込み方法 インターネット申し込み 9,300円 書面による申し込み 9,600円
(申込期間上期3月中旬~4月上旬)(申込期間下期8月下旬~9月上旬) - 筆記試験を受験 上期5月下旬(日曜日)下期10月下旬(日曜日)合格後③へ進む
- 技能試験を受験 上期7月下旬(土曜または日曜日)下期12月下旬(土曜または日曜日)
- 上期受験者で筆記または技能の試験に不合格となった場合は下期に申込できます。
「一般社団法人 電気技術者試験センターより引用」
2-1 第二種電気工事士の試験内容
筆記試験科目
- 電気に関する基礎理論
- 配電理論及び配線設計
- 電気機器、配線器具並びに電気工事用の材料並びに工具
- 電気工事の施工方法
- 一般用電気工作物の検査方法
- 配線図面
- 一般用電気工作物の保安に関する法令
全問題 50問 31問~50問まで問題2として配線図 (1問=2点で50問で100点)
試験時間 2時間
技能試験科目
- 配線の接続
- 配線工事
- 電気機器及び配線器具の設置
- 電気機器、配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法
- コード及びキャブタイヤケーブルの取付け
- 接地工事
- 電流、電圧、電力及び電気抵抗の測定
- 一般用電気工作物の検査
- 一般用電気工作物の故障個所修理
(上記に掲げる事項の全部又は一部について行います)
※実際には第二種電気工事士技能試験候補問題公表からNo.1~No.13までの内、一問が出題されます。
個人で技能試験の勉強をする場合は、制作物の現物写真がある教科書を参考にすることをお勧めいたします。
2-2 第一種電気工事士の試験内容
筆記試験科目
- 電気に関する基礎理論
- 配電理論及び配線設計
- 電気応用
- 電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用の材料及び工具並びに受電設備
- 電気工事の施工方法
- 自家用電気工作物の検査方法
- 配線図
- 発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性
- 一般電気工作物及び自家用電気工作物の保安に関する法令
全問題 50問 41問~50問まで3問題2として配線図(1問=2点で50問で100点)
試験時間 2時間20分
技術試験科目
- 電線の接続
- 配線工事
- 電気機器、蓄電池及び配線器具の設置
- 電気機器、蓄電池、配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法
- コード及びキャブタイヤケーブルの取付け
- 接地工事
- 電流、電圧、電力及び電気抵抗の測定
- 自家用電気工作物の検査
- 自家用電気工作物の操作及び故障個所の修理
(上記に掲げる事項の全部又は一部について行います)
※実際には第一種電気工事士技能試験候補問題の公表からNo.1~No.10までの内一問が出題されます。
「電気工事士技能試験候補問題の公表は申込時に一般社団法人 電気技術者試験センターで確認できます」
2-3 電気工事士試験の難易度
試験の難易度自体は、勉強して練れていればそれほど落ちる試験ではありません。
素人の方や電気工事従事補助者の方々で必要な勉強量をこなせば一度で受かる確率が上がります。
筆記試験問題の過去問題10年分を何度も繰り返し回答、復習をします。
最低でも5回以上で、できれば10回以上おこなっていただければベストです。
技術試験問題は、実際の施工工作の時間を最低でも30分以内で、25分で完成できればベストなスピードが身についています。試験会場では緊張して施工スピードも落ちますし、考え込んでしまうので、練習時には時間を短縮する練習も必要です。
なお、必ず単線図を書き換えて問題用紙に複線図を書きましょう。
単線図から複線図に書き換える時間は30秒〜1分以内で出来るようにしてください。
第一種電気工事士 筆記試験 50問中 60点(30問正解)で合格です。
第二種電気工事士 筆記試験 50問中 60点(30問正解)で合格です。
筆記試験は自己採点で31問中62点以上を最低ラインとして超えていれば大丈夫です。
第一種、第二種電気工事士技能試験は一か所でも欠陥があれば不合格ですので、完成後も見直しをして、十分な確認後に提出してください。
3 電気工事士に向いている人
丁重な仕事ができる人で、コミュニケーション能力の高い方が向いています。
大型案件の現場などでは、大人数で仕事をしなければなりませんので会話が必要になります。
「報告、連絡、相談」ができることが必要です。
電気の仕組みについて興味がある方や、時間をかけて同じことを最後まで仕上げることのできる人も向いています。
高所恐怖症ではない方です。脚立や高所作業車、電柱、ビルの屋上など高い場所での作業が平気な人で、体力に自信のある方。
まとめ
電気工事士の仕事である社会の電気インフラは、将来にわたって決してなくならない仕事であり、AIやロボットでは施行工事や修繕のできないものです。
電気工事士の資格を目指す方々も、仕事に従事される方々も、20代から40代の働き盛りがほとんどなので、資格を取った後は経験を積む意味でも、すぐに仕事を探し現場で経験を積むといいのではないでしょうか。
資格と経験次第では起業できる分野です。