雇用保険は、あなたが職を失ったときに役立つ制度です。
生活や雇用の安定、再就職支援を目的とする制度となっています。
そこで雇用保険の活用方法、手続きの方法を解説していきます。
1 雇用保険の給付内容
1-1 失業者のための給付
1-1-1 求職者給付について
・求職者給付(一般被保険者)
あなたが失業した場合、また雇用の継続が難しい場合に生活、雇用の安定を目的とした給付です。
代表的なのは失業手当です。詳細は、「失業保険はどうすればもらえるの?」を参考にしてください。
他には、基本手当、傷病手当、技能習得手当、寄宿手当の4種類がある。
基本手当は、失業した後、求職活動をしている一定の期間中に支給される手当です。
傷病手当は、ハローワークで求職手続きをした人が、病気や怪我によって15日以上活動できない状態が続いた場合に支給される手当です。なお、活動できない期間が14日以内の場合は、通常どおり基本手当が支給されます。
技能習得手当は、ハローワークなどで募集している公共職業訓練を受講した場合に支給される手当で、基本手当とは別に受けられます。技能習得手当には、受講日数に応じて支給される「受講手当」と、受講に要する交通費が支給される「通所手当」があります。
寄宿手当は、求職者が公共職業訓練を受けるために転居が必要となり、同居して生計を維持していた親族と別居することになった場合に支給される手当です。
・求職者給付(高齢被保険者)
高年齢被保険者とは、65歳以上の被保険者であって、かつ短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者とならない方を指します。高年齢被保険者が失業すると、一般被保険者に支給される基本手当にあたる「高年齢求職者給付金」が支給されます。
・求職者給付(短期雇用特例被保険者)
短期雇用特例被保険者とは、季節的に雇用される人、または雇用される期間が1年未満で短期の雇用につくことを常態としている人のことです。短期雇用特例被保険者が失業すると、一般被保険者に支給される基本手当にあたる「特例一時金」が支給されます。
・求職者給付(日雇労働被保険者)
雇用保険でいう日雇労働者とは、雇用期間の定めがなく日ごとに仕事をしている人、または雇用期間が30日以内の人のことです。日雇労働者が失業すると、一般被保険者に支給される基本手当にあたる「日雇労働求職者給付金」が支給されます。
1-1-2 就職促進給付について
就職促進給付は、再就職手当、就業手当、常用就職支度手当の3種類があります。
1-1-2-1 再就職手当
ハローワーク就職祝い金とも呼ばれており、早期に再就職先が決まったときでも雇用保険の受給資格を満たしている人が手当です。離職後の早期再就職を促し、離職者の再就職率を高めようとする目的があります。
支給額は、(ハローワーク利用案内参考)
・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上ある方
所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額
・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある方
所定給付日数の支給残日数×50%×基本手当日額
支給条件は、次の要件をすべて満たしている場合に手当が支給されます。
(ハローワーク利用案内参考)
・就職日の前日で、基本手当の支給残日数が45日以上あり、また所定給付日数の3分の1以上ある場合。
・1年以上雇用されることが確実な職業に就いた場合、または事業を開始した場合。
(生命保険の外務員や損害保険会社の代理店研修生のように、1年以下の雇用期間を定め、一定の目標達成ができないと雇用契約を更新しない場合や、派遣社員としえで1年以下の雇用契約を結び、更新が見込まれない場合は支給対象になりません。)
・原則として、雇用保険の被保険者となっていること。
・離職前に働いていた事業主(関連事業主を含む)に、再び雇用されたものでない場合。
・求職の申し込みをした日以前に、雇入れの約束を交わした事業主に雇用されたものでない場合。
・待期期間(7日間)が経過した後に職業に就いた場合、または事業を開始した場合。
・離職理由による給付制限期間中の方は、待期期間満了後1ヶ月間においては、公共職業安定所の紹介で職業に就いた場合。
・再就職手当を支給することで職業の安定に役立つと認められる場合。
・離職日前3年以内の就職について、再就職手当、常用就職支度手当、早期再就職支援金の支給を受けたことが無い場合。
・再就職手当の支給申請後、すぐに離職しない場合。
手続きは、(ハローワーク利用案内参考)
・再就職日が決まったら、管轄のハローワークに連絡します
・再就職日の翌日から起算して1ヶ月以内に、再就職手当支給申請書に受給資格者証を添付して、管轄のハローワークに提出します
・書類を提出した翌日から数えて7日以内に、再就職手当が指定した金融機関の口座に支給されます
1-1-2-2 就業手当
失業保険の受給資格がある人が、再就職手当の支給対象とならない常用雇用等以外で就業した場合に支給されます。つまり、 受給資格がある方がパートやアルバイトで就業した場合に支給される手当です。
支給額は、(ハローワーク利用案内参考)
基本手当日額 × 30% × 就業日=支給額
支給条件は、次の要件をすべて満たしている場合に手当が支給されます。
(ハローワーク利用案内参考)
・就職日の前日で、基本手当の支給残日数が45日以上あり、また所定給付日数の3分の1以上ある場合。
・離職前に働いていた事業主(関連事業主を含む)に、再び雇用されたものでない場合。
・求職の申し込みをした日以前に、雇入れの約束を交わした事業主に雇用されたものでない場合。
・待期期間(7日間)が経過した後に職業に就いた場合、または事業を開始した場合。
・離職理由による給付制限期間中の方は、待期期間満了後1ヶ月の期間内については、公共職業安定所の紹介により職業に就いた場合。
手続きは、(ハローワーク利用案内参考)
・まずはパートやアルバイトで働きます。
・4週間に1回、「就業手当支給申請書」に雇用保険受給資格者証と就職した事実を証明する資料(給与明細書等)を添付してハローワークに提出します。
・ハローワークに書類を提出した、その翌日から7日以内に就業手当が指定した金融講座に支給されます。
1-1-2-3 常用就職支度手当
就職困難な方が1年以上の雇用を見込む仕事に再就職したときに支給される手当。障害や過去に罪を犯してしまったことなどが原因で就職がスムーズにいかない方、かつ失業手当の支給残日数が1/3未満である場合に支給されます。
支給額は、(ハローワーク利用案内参考)
基本手当日額 × 90日 × 30%=支給額
※ただし、支給残日数が45日未満のときは、基本手当日額×45日×30%=支給額
支給条件は、次の要件をすべて満たしている場合に手当が支給されます。
(ハローワーク利用案内参考)
・就職日の前日で、基本手当の支給残日数が45日以上あり、また所定給付日数の3分の1以上ある場合。
・1年以上雇用されることが確実な職業に就職した場合。
・給付制限経過後に職業に就いた場合。
・離職前に働いていた事業主(関連事業主を含む)に、再び雇用されたものでない場合。
・求職の申し込みをした日以前に、雇入れの約束を交わした事業主に雇用されたものでない場合。
・待期期間(7日間)が経過した後に職業に就いた場合、または事業を開始した場合。
・公共職業安定所の紹介により職業に就いた場合。
・再就職手当を支給することで職業の安定に役立つと認められる場合。
・離職日前3年以内の就職について、再就職手当、常用就職支度手当、早期再就職支援金の支給を受けたことが無い場合。
・再就職手当を受けることができない場合。
手続きは、(ハローワーク利用案内参考)
・まずは1年以上雇用されることが確実な職業に就職します。
・再就職日の翌日から1ヶ月以内に、常用就職支度手当支給申請書に雇用保険受給資格者証を添付して、管轄ハローワークに提出します。
日雇受給資格者の場合は、被保険者手帳を添えて、安定した職業に係る所轄公共職業安定所長に提出してください。
・ハローワークに書類を提出した、その翌日から7日以内に常用就職支度手当が指定した金融講座に支給されます。
1-1-3 教育訓練給付について
教育訓練給付金制度とは、働く方の主体的な能力開発の取組み又は中長期的なキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とし、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給されるものです。
一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、教育訓練支援給付金(令和7年3月31日までの時限措置)の4種類あります。
1-1-3-1 一般教育訓練給付金
働く方の主体的な能力開発の取組みを支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする雇用保険の給付制度です。
1-1-3-2 専門実践教育訓練給付金
中長期的なキャリア形成を支援するため、拡充された教育訓練給付金です。専門的・実践的な訓練が対象となるため、給付率は一般教育訓練給付よりも高く、訓練の受講を修了・資格取得等をし、修了から1年以内に就職に結びついた場合は、追加の支給も受けられます。
支給額は、
教育訓練施設に支払った教育訓練経費の50%に相当する額となります。ただし、その額が1年間で40万円を超える場合の支給額は40万円(訓練期間は最大で3年間となるため、最大で120万円が上限)とし、4千円を超えない場合は支給されません。
専門実践教育訓練の受講を修了した後、あらかじめ定められた資格等を取得し、受講修了日の翌日から1年以内に被保険者として雇用された方又はすでに雇用されている方に対しては、教育訓練経費の20%に相当する額を追加して支給します。
1-1-3-3 特定一般教育訓練給付金
キャリアアップによる雇用の安定や再就職の支援のための制度です。一定期間以上雇用保険に加入している(していた)方が、国の指定を受けた教育訓練機関での職業訓練や資格取得のための予備校、通信講座を受けた場合に、その費用の一部を国から支給してもらえるというものです。
支給額は、
教育訓練施設に支払った教育訓練経費の40%に相当する額となります。ただし、その額が20万円を超える場合は20万円とし、4千円を超えない場合は支給されません。
1-1-3-4 教育訓練支援給付金(令和7年3月31日までの時限措置)
専門実践教育訓練給付金を初めて受給する人が、昼間通学制の専門実践教育訓練を受講しているなど、一定の条件を満たした方が失業状態にある場合に受給できる給付金制度です。離職前の基本手当の日額の80%相当(上限あり)が支給されます。
支給額は、
当該訓練受講中の基本手当の支給が受けられない期間について、基本手当の日額と同様に計算して得た額に80%の割合を乗じて得た額に、2か月ごとに失業の認定を受けた日数を乗じて得た額を支給します。
※ 平成29年12月31日以前に受講開始した専門実践教育訓練の教育訓練支援給付金の日額は、基本手当の日額と同様に計算して得た額に50%の割合を乗じて得た額になります。
1-2 就業者のための給付
先の説明した、教育訓練給付は失業者のためでもあり、また就業者のためでもあります。
それ以外の給付としては雇用継続給付というものがあります。
1-2-1 雇用継続給付について
育児休業給付、介護休業給付、高年齢雇用継続給付などがあり、それぞれ働けない事由がある場合に、所得を保証する制度です。
1-2-1-1 育児休業給付
育児休業を取得した労働者に対して、雇用保険から支払われる給付金のことです。
支給額は、(ハローワーク利用案内参考)
育児休業開始日から6ヶ月間
休業開始時の賃金日額 × 支給日数×67%
育児休業開始日から6ヶ月経過後
休業開始時の賃金日額 × 支給日数×50%
休業開始時の賃金日額とは、休業開始前6ヵ月の賃金を180で割った金額で、支給日数とは、原則として1ヵ月あたり30日(休業終了する月は終了日までの日数)です。
ただし、賃金月額の上限額は45万600円、下限額は7万7,310円です。賃金日額×支給日数が上限および下限の範囲を上回る(あるいは下回る)場合は、上限(あるいは下限)の金額となります。
支給条件は、次の要件をすべて満たしている場合に手当が支給されます。
・1歳未満の子供を養育するために育児休業を取得する
・現在企業に雇用されて働いており、雇用保険に加入している
・育児休業を開始した日からさかのぼって2年間に、雇用保険の被保険者期間が12ヵ月以上(1ヵ月のうち11日以上働いた場合に1ヵ月とみなす)ある。
有期雇用契約で働いている労働者の場合は、前述の条件をすべて満たすことに加えて、育児休業を開始した時点で、下記の条件を満たす必要があります。
・子供が1歳6ヵ月になるまでのあいだに、労働契約が終了することが決まっていない
手続きは、原則として事業主が行いますが、支給申請手続きについては、特別な理由があって事業主経由で申請ができない場合や、本人が希望した場合は労働者自身が手続きをすることも可能です。
支給申請手続きは、育児休業給付金の受給資格確認手続きと同様に、事業所を管轄するハローワークで行います。また、支給申請手続きも電子申請が可能です。
1-2-1-2 介護休業給付
家族が介護状態である場合、介護のために仕事を休まなければならないこともあります。
介護のために仕事を休むことを介護休業といいます。
介護休業時に安心して介護に専念できるようにする制度が介護休業給付金です。
支給額は、(ハローワーク利用案内参考)
介護休業給付の各支給対象期間(1か月)ごとの支給額は、原則として休業開始時賃金日額×支給日数×67%です。
支給対象となる介護休業(平成29年1月1日以降に介護休業を取得する方)は、
介護休業給付金は、以下の1.及び2.を満たす介護休業について、支給対象となる同じ家族について93日を限度に3回までに限り支給します。
負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)を必要とする状態にある家族(次のいずれかに限る)を、介護するための休業であること。
被保険者がその期間の初日及び末日とする日を明らかにして事業主に申し出を行い、これによって被保険者が実際に取得した休業であること。
手続きは、(ハローワーク利用案内参考)
1.事業主は、雇用している被保険者が対象家族の介護のため休業を開始した場合、休業開始時賃金月額証明書を、支給申請書を提出する日までに事業所の所在地を管轄するハローワークに提出しなければなりません。この場合、賃金台帳、出勤簿などの記載内容を証明する書類を添付してください。
ただし、2.の支給申請手続きを事業主の方を経由して行う場合、この手続きについては、介護休業給付金の支給申請と併せて行うことが可能です。
2.介護休業給付金の支給を受けるためには、1.の手続き後に事業主を経由して支給申請をしていただく必要があります。なお、支給申請書の提出は各介護休業終了日(介護休業が3か月を経過したときは介護休業開始日から3か月経過した日)の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までに行う必要があります。
1-2-1-3 高年齢雇用継続給付
現役時代に比べて給与が下がってしまうことに対し、国の対策として実施されているのが高年齢雇用継続給付金です。
種類は2つで、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」です。
・高年齢雇用継続基本給付金
高齢を理由として給与額が一定以上下がった場合に支給される給付金です。60歳以降の給与額が60歳時点の給与額と比べて「75%未満」に下がった場合に支給されます。定年再雇用で給与が下がった際に活用されることを想定した制度です。
高年齢再就職給付金
退職し、雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付のことを指します)を受給して60歳以上になってから再就職し、なおかつ再就職後の給与額が60歳時点と比べて「75%未満」に下がった場合に支給されます。定年退職した後に別の企業に再就職したものの、前職と比べて給与が下がった際に活用されることを想定した制度です。
2 まとめ
雇用保険のイメージは失業保険という方が多いと思いますが、説明してきた通り、かなり多岐にわたります。
産休・育休中の方から、失業中、高齢者の方まで活用方法はあります。
基本的な考え方は、労働者の生活、雇用の安定と就職の促進です。
私は給付の対象になるのか?疑問がある方は、厚生労働省のホームぺージや、お近くのはハローワークに相談することがいいと思います。